2013年3月17日日曜日

2013年度コレクション展Ⅰ「はるかなる風景」について

こんにちは、ブログ担当です。遅ればせの更新になってしまいましたが、福岡県立美術館では、3月9日(土)より、新しい展示、コレクション展Ⅰが始まりました。その名も「はるかなる風景」。今回は、風景画に焦点を当てた展示です。
風景画といっても、実にさまざまなものがありますが、今回の展示では次の5つのテーマに分けて、日本画・洋画の中から精選した多彩な作品をご紹介しています。

   (1)日本の四季を旅して
   (2)あこがれの異国の街へ
   (3)追憶の風景
   (4)幻想の世界
   (5)異界へのいざない

スタッフ一同、みなさまのお越しを心からお待ちいたしております。
また、毎週土曜日14時より、学芸員によるギャラリートークも開催しますので、合わせてご参加くださいね。

それでは、「はるかなる風景」について、担当の魚里学芸員が寄せた文章を紹介いたします。

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風景画は絵画ジャンルの中でも最も重要な一つであり、福岡ゆかりの美術作品を中心とする福岡県立美術館のコレクションにおいても、質量ともに大きな位置を占めています。今回のコレクション展では「はるかなる風景」のテーマのもと、雄大な風景、のどかな風景、なつかしい風景、記憶の風景、幻想的な風景、不思議な風景など、近代の洋画、日本画から精選した様々な表現の風景画を特集展示します。

■日本の四季を旅して
 日本は、四季の変化が織り成す美しい景観に満ちており、多くの画家たちが画題を求めて各地を旅してきました。画家たちは、四季の旅先で、美しく懐かしい風景を次々と見出したのです。中村琢二、高島野十郎、柳瀬正夢、大田歳らの出品作を味わいながら、日本の四季を旅してみませんか。

■あこがれの異国の街へ
 国外へ出かけることが容易ではなかった時代、画家たちにとってヨーロッパ、とりわけ藝術の都パリはあこがれの地でした。このコーナーでは、児島善三郎、高島野十郎ら宿願の欧州行きを果たした画家たちに焦点を当て、かれらの目に映ったパリ風景を中心に展観します。

■追憶の風景
 福岡はかつて、筑豊炭田はじめ日本の近代化を担った炭坑を数多く有し、日本最大の産炭地として栄えましたが、昭和30年代にはエネルギー源の主体が石炭から石油へ移行したことで、次第に炭坑は閉じられ、人々の活気も衰退していきました。当時の沈鬱で重々しい雰囲気を充満させた野見山暁治の作品、急速に姿を消してゆく炭坑住宅を描いた森田秀樹の作品などから、滅びゆくものへの思いを馳せてください。

■幻想の世界
 シュルレアリスムの影響が色濃い、現実にはありえない景観。あるいは想像力や詩情が交錯して生み出された不思議な光景。青木寿、伊藤研之、山喜多二郎太の作品には、このような幻想的な世界が現れています。

■異界へのいざない
 異界とは、もともと民俗学等での用語で、自分たちが属する世界の外側や、疎遠で不気味な世界を意味します。そのような異界そのもの、あるいはそこへの入口へを思わせる風景は、異様なまでの力を秘めています。高島野十郎、尾花成春、滝純一らが描く風景の奥には、何が潜んでいるのでしょう。

 画家たちがあこがれ、自らの絵心を高ぶらせた日本や外国の風景。また、自由で奔放な想像力が創り出す不思議の風景。あるいは、心や記憶の奥底に深く沈潜した風景。30数名の画家たちのまなざしが見つめ、描き出された「はるかなる風景」は、あなたの心をどのような世界へいざなうでしょうか。


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2013コレクション展Ⅰ 特集 はるかなる風景
会期=2013年3月9日(土)~6月30日(日)
休館日=月曜日(ただし祝祭日の場合は翌火曜日休館)
会場=福岡県立美術館 4
時間=午前10時~午後6(入場は午後5路30分まで)