小石原焼と小鹿田焼に惚れぼれしてもらうのが一番なんですが、この展覧会の見どころは、やきもの以外にもあったりします。
題して、裏見どころ。
そのひとつが、会場で流している30分ほどのDVDです。
これは、Marty Grossというカナダの映像作家が1976年に撮影したドキュメンタリーで、当時の小石原と小鹿田が収められています。題して、「Potters at Work」。
技法の解説や歴史の紹介などは一切なく、2つの里の陶工がやきものをつくり、生活している様子が淡々と流れています。しかし、だからこそ、いい。
黙々と轆轤を挽く陶工の姿や、小鹿田の里に響き渡る唐臼の音、急な夕立にあわてて外のやきものを中にしまいこむ家族総出の作業。ちょっとだけ見るつもりで席に着いたはずが、気づけばしっかりと30分見終っていた、というのもうなづけます。
ちなみに映像におさめられている陶工は、小石原では太田熊雄さん、小鹿田では坂本茂木さん。ともに名工と謳われた方です。そして、ふたりの手さばきだけでなく、家族一丸となってやきものづくりに勤しむ様子も良く分かります。
さらに、裏見どころその2。
それは、お茶碗がズラリと並べられた、その長い一枚板です。
それは、お茶碗がズラリと並べられた、その長い一枚板です。
長さ4メートル、重さ120キロのこの杉の板は、美術館の作品搬入エレベータに乗らず、美術輸送業者さんたちと階段をえっちらおっちらと運んだわけですが、「ほ~、この板、いいいねえ」との声が続出。
今回、企画にも協力いただき、会場施工も請け負っていただいた坂崎隆一さんの提案により実現しました。
写真に写っている木製のキャプションもまた坂崎さんの提案。
展示台やキャプションは、展示作品を主役とするならしょせん脇役ではありますが、しかし名脇役は主役を食うくらいの存在感を放ち、展覧会という場の印象さえ大きく左右することがあります。
唐臼の音や鳥の鳴き声がかすかに響き、天然の木が随所に横たわる空間。そこに土からできたやきものが居並ぶ。ほっこりできないはずがありません。長い方では会場に2,3時間も滞在してくださる方もおられます。
みなさんもぜひ、ご来場ください。お待ちしています。