2012年3月21日水曜日

コレクション展Ⅰがはじまりました。

こんにちは。福岡県立美術館ブログ担当のY.Tです。
いつも福岡県立美術館ブログを見ていただいているみなさま、どうもありがとうございます。
3月17日(土)より、当館4階展示室ではコレクション展がはじまりました。
2012年度最初のコレクション展では、没後30周年を記念し、紙塑人形作家の鹿児島寿蔵を特集します。

明治31年、福岡市に生まれた鹿児島は、はじめ博多人形の技術を学び、その後テラコッタに取り組みます。さまざまに試行錯誤を重ねるなかで、奈良で見た塑像の仏像をヒントに、和紙という堅牢な素材の研究を重ね、「紙塑(しそ)」の技法を完成し、のちに重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されるのです。

こうぞとパルプに充填剤や粘着剤を混ぜ、長時間臼でつき、こねるという鹿児島の紙塑人形は、堅牢で虫害もなく、カビも生えず、少々の水や火にさえ耐えられるのです。そこに、自ら染めた和紙を小さくちぎって貼り、文様に金銀砂子を貼り重ねていくことで、独特の美しい質感が生まれます。このようにして、鹿児島は人形造形の可能性を大いに拡張したといえるのです。

鹿児島は、紙塑のわざを駆使しつつ、古今東西の伝説や風俗を主題とする人形を作りましたが、とくにその中核をなすのが、日本古代を主題とする作品群です。今回の展覧会でも、「磐代の浜松が枝を引き結び真幸くあらばまた還り見む」「家にあれば笥(け)に盛る飯を草枕 旅にしあれば椎の葉に盛る」(『万葉集』)という歌を残し、謀反の罪で19歳で処刑された悲劇の皇子である「有間皇子」をはじめとする作品を展示しています。


鹿児島寿蔵「有間皇子」1978年、当館蔵

また、鹿児島は、人形作家であるのと同時に、アララギ派の歌人としても著名でした。今回は人形と同時に、鹿児島自筆の短歌書もご紹介します。彼の幻想的な作風は、人形と短歌という二つの創造活動が互いに深く絡み合うことを通して生まれたものといえるでしょう。

また、今回のコレクション展ではもうひとつの特集があります。
「美術館は花ざかり」というテーマをかかげて、洋画、日本画、工芸の各分野から花をモチーフとした作品を多数展示しています。春から初夏は、たくさんの花が咲き乱れる百花繚乱の季節。
美術作品の中から、あなたの好きな花を見つけませんか?

なお、毎週土曜日の14時からは、学芸員によるギャラリートークも開催いたします。
皆さまのおこしを心よりお待ちしております。


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2012コレクション展Ⅰ 特集 没後30年 鹿児島寿蔵 美しき紙塑人形のわざ

会期=2012年3月17日(土)~6月3日(日)
休館日=月曜日(ただし祝祭日の場合は翌火曜日休館)
会場=福岡県立美術館 4
時間=午前10時~午後6(入場は午後530分まで)