ですので受け入れるこちら側も、鑑賞授業的対応とは異なり、ゆうるりと。
とくに絵の説明をするでもなく、鑑賞の誘導をするでもなく、もともと好きで来てくれた人たちですから好きに見てもらっていたところ、、、
出るわ出るわの、いろんな楽しい発見。
なかでも秀逸だったのが「股のぞき」。
分かります?女の子が自分の股をとおして松本英一郎の「さくら・うし」を見ているところ。
立って見る、座って見る、寝転んで見る、と視点の高さを変えるだけで絵の印象はずいぶん変わるものですが、それがこれは逆さまなわけですから、その変化たるやかなりのもの。
で、つられて私もやってみました。
もちろん絵はがらりと変わります。変わりはしますが、想像以上にしっくりきたので、むしろそのことに驚きました。
じつは私自身、ギャラリートークで「松本英一郎の「さくら・うし」のシリーズは上に広がる雲のような桜と下に広がる大地とが見ているうちに入れ替わったりして、、、」という説明をよくしているのですが、なるほどこの「股のぞき」はその見方を実証してくれたわけです。
この女の子は絵の構図的な特徴を把握したうえでこんな見方をやっていたわけではありません。たまたま思いついて、ほとんどふざけて試していただけなんですが、なによりその「思いつき」を実際にやってみる自由さが小さい人たちの特権でしょう。
そして、そんな自由さに応じるかのように深みを増していくのが、美術の面白いところでもあります。
美術ってどう見てもいいんだね、美術館ってけっこう面白いね。そんなふうに感じてくれればうれしいなあ、と思います。
ちょうど晴れ間がさした一瞬、みんなで記念撮影をして、小さい人たちはバスに乗り込んで次の目的地である福岡市美術館へと去っていきました。