坂本繁二郎といえば、福岡県を代表する作家として、その淡くやわらかな色や、ほっと心が温まるようなやさしさがとても人気の作家です。
馬や月を描いたことでよく知られています。
今回は、とくに坂本繁二郎の「能面」を中心とする静物画を出発点として、その魅力に迫ろうというものです。
皆様のお越しを心よりお待ちいたします。
それでは、本展担当学芸員による展覧会紹介文をどうぞ。
久留米市出身の洋画家坂本繁二郎(1882-1969)は静謐で精神性の高い静物画を制作しました。おぼろげな色合いの中、日常身辺にある道具を配し、物と背景とが溶け合うかのような不思議な空間が展開されています。しかし、やわらかな色が塗り重ねられることで、物の存在感が際立っています。さらに、画面にあまねく光があふれているだけではなく、物自体が光を放つかのようでもある幻想的な空間。動かぬものを対象とする点で、作家にとって自由度が高い静物画には絵画制作のエッセンスが凝縮されています。そこで本展では、彼の静物画を出発点として、その奥深い絵画の魅力に迫ります。坂本の作品世界に流れる永遠の時間にあなたも身をゆだね、描くことを通して自己と向き合った坂本の眼差しに思いをはせてみませんか。なお、本展では坂本の作品約40点に加え、髙島野十郎、児島善三郎らによる静物画もご紹介します。
【展示構成と出品作品】
Ⅰ坂本繁二郎と静物画
①初期作品
坂本繁二郎
深川風景, 1903 [寄託作品]
石膏像, 1903 [寄託作品]
郊外風景, 1904 [寄託作品]
少女, 1912 [個人蔵]
桜, 1918 [寄託作品]
巴里の乞食, 1923
蓮華峰遠望, c.1924 [寄託作品]
②牛と馬
坂本繁二郎
牛, 1914 [寄託作品]
馬, 1927 [個人蔵]
厩の馬, 1934 [個人蔵]
馬, c.1935 [寄託作品]
母仔馬, 1965 [寄託作品]
牛, 1919-1965 [個人蔵]
馬 , c.1950 [個人蔵]
厩の白馬, 1937 [個人蔵]
馬, 1947 [個人蔵]
川を渡る馬, 1947 [個人蔵]
馬三題I, 1951 [寄託作品]
馬三題II, 1951 [寄託作品]
馬三題III, 1951 [寄託作品]
③動かぬ物との対話
坂本繁二郎
紙 , 1916 [寄託作品]
柿, 1925
柿, 1927 [個人蔵]
石, 1954
能面, 1955
小瓶など,1956 [個人蔵]
林檎, 1958 [個人蔵]
鋏 1964 [寄託作品]
橙,1964 [個人蔵]
南瓜, c.1960 [寄託作品]
④夢かうつつか幻か
坂本繁二郎
夕月, 1944 [個人蔵]
飲馬, 1963 [個人蔵]
月, 1963 [個人蔵]
月, 1966 無量壽院蔵 [寄託作品]
放牧場, 1967
八女風景, 1968 [個人蔵]
幽光 1969 [個人蔵]
⑤筑後洋画と風土
松田諦晶
櫨紅葉(音羽護国寺) 1914
青木繁
筑後風景 1910 [寄託作品]
春奏 [寄託作品]
森三美
刈入れ c.1898 [寄託作品]
河辺の風景, c.1910
井上三綱
文字発生, 1959
古賀春江
埋葬, 1922
坂宗一
砂湯, 1962
高島野十郎
春の海, 1952
⑥坂本繁二郎の肖像写真
片山攝三
坂本繁二郎氏, 1963
坂本繁二郎氏, 1963
Ⅱ 物言わぬモノたちのささやき~静物画特集
青木寿
夏の終り, 1959
青柳暢夫
果物籠の静物, 1954
赤星孝
赤の静物, 1949
尾花成春
石膏のある静物,
1952
木下邦子
みやげ, 1975-1976
児島善三郎
虞美人草, c.1940 [寄託作品]
静物, 1949
高島野十郎
蝋燭 , 1912-1925
さくらんぼ,1957 [寄託作品]
割れた皿, c.1958
こぶしとリンゴ, c.1966
ティーポットのある静物
久野大正
静物, 1955
藤田吉香
手のある静物 1993
松田諦晶
栗 静物,1951 [寄託作品]
松林千里
静物 1922
間部時雄
秋果の図,1937 [寄託作品]
山田栄二
花 , 1953
山喜多二郎太
静物, 1937