2012年6月23日土曜日

他にもいろいろ展示中

今回のコレクション展では松本英一郎を特集して、油彩画と水彩画をたくさんご紹介していますが、その他の作家の作品も展示しております。

松本英一郎ゆかりの筑後の作家としては森三美(1)、坂本繁二郎(1)、松本諦晶(1)、山村秀一(1)、清田英作(1)。他には寺田健一郎(4)、伊藤研之(2)、阿部金剛(1)、田淵安一(2)、野見山暁治(2)、高島野十郎(4)です。 *順不同、( )内は出品点数

ちなみに今回はすべて洋画作品。なかでも大半が風景画になります。

以下に出品リストを掲載しておきます。



松本英一郎 (1932-2001)  ★水彩画 watercolor
   
敗走者 Flight Runner 1958
満帆2 Large Sail 2 1969
風景No.4 Landscape No.4 1981
風景 Landscape 1983 ★
頂上の風景 Landscape of the Top 1985 
頂上の風景 Landscape of the Top 1987
退屈な風景 Tedious Landscape  1986-87 ★
さくら・うし Cherry Blossom / Cow  1990
さくら・うし Cherry Blossom / Cow  1992 ★
旭光・さくら・うし Rising Sun, Cherry Blossom/Cow 1993 ★
無題 Untitled 1993 ★
さくら・うし Cherry Blossom / Cow 1994 ★
町の空白 The Void of Town 1995 ★
花と雲と牛 Flower, Cloud and Cow 1997
吉野 蔵王堂 盛花 Yoshino, Zaou-dou, Full Bloom 1997 ★
夏 湯河原にて Summer at Yugawara 1997 ★
夏の日の月 Moon in Summer Day 1997 ★
花と雲と牛 Flower, Cloud and Cow 2001
自画像 Self-Portrait undated ★

その他多数展示している未額装の水彩画については、作品の性質上キャプション表記を割愛しています。作家の自由な目と気持ちに添って楽しんでいただければ幸いです。


筑後の作家たち(松本英一郎ゆかりの作家を中心に) 

清田英作 (1933-1989)  KIYOTA Eisaku
  漂泊の抒唱(別かれ)  Wander and Chant (Parting)  1988
坂本繁二郎 (1882-1969) SAKAMOTO Hanjiro
  月 Moon 1966 寄託作品
松田諦晶 (1886-1961)  MATSUDA Teisho
  今宿海岸暮色 Twilight at the Beach of Imajuku 1934
森 三美 (1872-1913)  MORI Miyoshi
  河辺の風景 Scene of Riverside c.1910
山村秀一  (1896-1989)  YAMAMURA Hideichi
  漁港  Fishing Port  1950-54


当館コレクションから

阿部金剛 (1900-1968) ABE Kongo
  Rien No.1 1929
伊藤研之 (1907-1978) ITOH Kenshi
  風景 Landscape 1976
  赤い建物 Red House  1953
田淵安一 (1921-2009) TABUCHI Yasukazu
  夜中の出現No.6  Emergence Nocturne No.6  1992
  夜中の出現No.7  Emergence Nocturne No.7  1992
高島野十郎 (1890-1975) TAKASHIMA Yajuro
  すいれんの池 Pond of Water Lillies 1949
  有明の月 Pale Morning Moon after1961
  蝋燭 Candle 1912-1925
  無題 Untitled undated
寺田健一郎 (1931-1985)  TERADA Ken'ichiro
  太郎の庭 Taro's Garden  1968
  夏の庭 Summer Garden  1968
  わがモンロー My Monroe  1974
  わがモンロー My Monroe  1975
野見山暁治 (1920- )  NOMIYAMA Gyoji
  遠ざかった景色 Fading Scenery 1981
  予兆 Presentiment 1988


森三美「河辺の風景」1910年頃








伊藤研之「風景」1976年








寺田健一郎「太郎の庭」1968年









*画像の無断転載はご遠慮ください

2012年6月17日日曜日

こんな絵を展示してます

静かに絶賛開催中の(ってどっちやねん?!)コレクション展2「なつやすみ特集 松本英一郎 風景は微細動する」(~8/31)。

今回は、松本英一郎(1932-2001)ってどんな絵を描いている人なの?、会場にはどんな絵が展示してあるの?と思われている方のために作品をすこしご紹介しましょう。

こんなの。

満帆2 1969年

風景No.4 1981年

頂上の風景 1985年

さくら・うし 1990年

花と雲と牛 1997年

どうです? 不思議な「風景画」でしょう? 上にご紹介しているのは油彩画だけですが、今回は水彩画もたくさん展示しています。

たとえばこんなの。

退屈な風景 1986-87年

さくら・うし 1992年

油彩画と同じモチーフを描いていてもずいぶんと雰囲気が変わっています。

どちらがお好みですか?

あ!ここで答えを決めるのはもったいないですよ。どうぞ会場に足を運び、その目でご覧ください。ここで見るのとは、きっと全然ちがって見えますから。


*画像の無断転載はご遠慮ください。













2012年6月12日火曜日

なつやすみ特集はじまりました!

6月9日よりコレクション展2「なつやすみ特集 松本英一郎 風景は微細動する」が始まりました。

まだまだ来場者は少ないですが、なかには1時間、2時間滞在してくださる方もあり、うれしいかぎりです。

8月31日までと長くやっておりますが、できれば何度も見ていただきたい、そんな展示になっています。

みなさんのお越しをお待ちしております。


。。。って、それだけではどんな展覧会は分かりませんよね。

ごもっとも。では特別大サービス、来場者にお配りしているリーフレットの文章を掲載します。

絵はまた今度ね。と、もったいぶってみたり(笑


**

松本英一郎が描く風景画は大きい。

それは、絵画作品としての迫力や描かれた風景の雄大さをアピールするためのものではおそらくない。そうではなく、遠くから見ることを促すための手段であるように思える。

松本はしばしばえぐられた地面や不格好に盛り上げられた地面を描いている。「その地面の奇態に、何の抵抗もなく入っていく私自身を丁寧に見届ける必要」があると彼は言う。描かれているのはたしかに地面であり、風景である。しかし描こうとしているのは、それを見て、感応している画家自身の眼差しである。風景と向き合い、訳も分からぬままに心を揺さぶられるその震えのようなものを、絵として描きだそうとしている。

たしかに松本の「風景」は震えるのだ。垂直線を排して水平線で構成された画面は時間とともにわずかに揺れはじめ、雲は手前に伸びてきたかと思うと奥に引っ込み、白黒のまだら模様の牛は丘陵の襞模様の間で見え隠れし、そのうち白とピンクの縞模様の雲(あるいは花)と溶けあう。空を上下に挟む雲と丘陵がときに入れ替わり、世界の上下は混濁する。ぼかしやにじみなども多用しながら巧みにつくられた画面が視覚的な震えをもたらし、それはそのまま画家自身が体感したであろう心理的な震えへと転化される。

ただしそのためには距離を必要とする。離れて見ること、想像的に見ること。

松本は決して風景の美しさの中に没入しない。いや、彼自身が風景を前にして「美しいなあ」と素直なため息を漏らすことはもちろんあっただろう。しかし画家である彼はその美しさとは距離を取り、時間をかけてまなざし、身体をとおして風景との関係を思索する。

「退屈で、退屈で、体がじんじんするのを感じられればそれが最高だ」と言う松本は退屈な「風景」を描き、描くことで風景との関係を思索した。

風景と松本との間に横たわる震えをもたらすなにか、「じんじん」させるなにか。そのなにかをひとまず「空間」と呼ぶこともできるだろう。しかしそれは通常イメージされるところの静止した空っぽの広がりとは異なり、密度と動きをもって目や耳、肌に生々しく触れてくる。大きな画面のさらに大半を占めるあの空と同じように。

松本が遺した膨大なスケッチの山の中から「なさそうで実在する風景 ありそうで実在しない風景」という書き込みを見つけた。だからといって彼の「風景」がそのどちらに属するのかと答えを導くことはやめておく。彼の「風景」の魅力とはむしろ、その境界を行き来しつつ、これがどちらに属するのかと考えさせるところにある。ひとたび松本の「風景」を通過した私たちの眼前には、あらゆる風景が瑞々しさをもってたち現れてくるだろう。

そして改めて知るはずである。風景とは「風」の「景」色であることを。

そして吹き抜ける風を感じるためには、やはり絵の前から遠ざからなければならない。