2013年7月22日月曜日

夏休みワークショップの企画者、今林明子さんからのメッセージ

今回の夏休みワークショップを企画してくださったのは今林明子さん。

モノクロームの画面に、果物、花、死んだ鳥やガラス製品などをモチーフとして、光と影の対比が印象的な静物画を描く新進気鋭の画家です。



その今林さんから、今回のワークショップの企画意図についてメッセージをいただきましたのでご紹介します。

今林さんの想いを知ることで、きっとワークショップが何倍も楽しくなること間違いありません!!




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夏休みワークショップ
「ヒカリバコ ―フィルターを通して見る光の世界―」


カメラ・オブスキュラとは、15世紀あたりから素描をするための光学装置として多くの画家たちが用いてきたもので、現在のカメラの原型とされています。カメラ・オブスキュラを用いていたとされる代表的な画家が、「真珠の耳飾りの少女」で有名なヨハネス・フェルメール(16321675)です。フェルメールは光の画家とも言われています。
光はこれまで多くの画家たちがテーマとしてきた題材です。今回ワークショップを開催するにあたり、本展のメインである坂本繁二郎(18821969)と私の作品の共通点は、作品に内在する光でした。坂本の幾重にも重ねられた柔らかな色の層からもたらされる不思議な光と私のアウトフォーカスでどこか輪郭を失った光と影の像は、そこに描かれたモノの存在を超えた永遠の時間を感じさせます。美術家に求められるのは、私たちが生きるこの世界を美術家自身の心のフィルターを通し、いかに作品として提示できるかだと思います。坂本の素朴でありながら深い精神性を感じさせるその画面には、坂本自身の愚直なまでに淡々と現実を見つめ続けた姿勢が表れているのではないでしょうか。
今回ワークショップで作成するヒカリバコ=カメラ・オブスキュラは光学装置として光の像を私たちに見せてくれるだけでなく、画家たちのフィルターを通した世界を追体験させる装置をも兼ねています。
薄いトレーシーングペーパーの皮膜に映る光景は、輪郭もはっきりしない淡くて儚いものです。写真のように形を残すこともできません。しかし、儚いからこそどこか蠱惑的なのです。カメラ・オブスキュラの小さな窓越しに見る世界は、体験者に普段私たちが現実に見ているものを見た時と違った感動や気づきを与えてくれるでしょう。本体験が体験者の方々がこれから世界と向き合うための新たな視点を与えるきっかけに少しでもなればと願っています。


今林明子